2004.9.


CAQ「街と人をつなぐ」
ひろしま川通り活用委員会
 隆杉純子さん

 
「基町POP’La(ポップ・ラ)通り」「8月6日通り」…広島の川に沿った歩道に名前がついたのを知っていますか。「CAQ『街と人をつなぐ』ひろしま川通り活用委員会」は、川沿いの道に名前(愛称)をつけて、水辺の空間をもっと楽しもうとさまざまな提案や試みを実践している市民団体。隆杉純子さんの「こんなすてきな川沿いの道に名前がないなんて…」という思いが多くの人々をつなげて、川の流れのようにゆるやかにそして楽しく動きはじめました。


隆杉さんがたった一人でこの活動を始めたそうですが、その熱い思いを聞かせてください。
  転勤で広島を離れ、2年前に14年ぶりにもどってきて、身近に川や緑のあるこの街に感動しました。散歩やジョギングだけでなく、通勤・通学にも使われ、恋人たちの語らいの場にもなっている川沿いの歩道、そんなにみんなに愛されているのに、名前はついていないんですよ。ヨーロッパ、特にフランスではどんな小さな通りにも名前があると聞いて、広島でもあったらいいなと思ったんです。 仲間を集めて「CAQ『街と人をつなぐ』ひろしま川通り活用委員会」を立ち上げ、広島市の事業「水の都ひろしま」の市民活動促進助成交付を受け、昨年9月から「川通りの命名プロジェクト」の活動を始めました。仲間で地域計画プランナーの前田文章さんが「名前をつけるって大事なことだよ。その場所に魂が宿るんだ」って、私の気持ちを後押ししてくれ、いろんな人がかかわって、あれよ、あれよというまに、進んでいきました。
▲「基町POP’La通り」を眺めながら「雁木タクシー」は風を切って進む

基町POP’La通り」「8月6日通り」「京橋川ばた通り」などのすてきな名前はどのようにして決めたのですか。
 市民の皆さんから名前を募集しました。場所は、広島らしい風景があり、みんながよく知っている京橋川右岸(栄橋〜上柳橋〜京橋)、本川左岸(三篠橋〜空鞘橋の基町環境護岸周辺)、元安川左岸(相生橋〜元安橋〜平和大橋)の3ヵ所。現地に太田川流域の間伐材を使った「命名柱」を立て、応募用紙と回収ポストをつけました。この申請は大変だったんですけど、原木の加工などをお手伝いしてくださるグループや子どもたちがたくさん参加してくれて、感激でした。998通の応募があり、公開選考会を開き、まちづくり専門家、松波龍一さんたちにも相談して決定しました。
▲命名された3つの通りの地図

今歩いてきましたが、「基町POP’La通り」は広がりがあっていいですね。ポプラがやさしい木陰をつくってくれるし…。
  この通りの名前はシンボルのポプラと軽音楽の「ポップス」の軽やかなイメージを重ね合わせて名づけられました。「POP’La」は当時、大学4年の男性からの応募でした。とっても気にいってます。 実はこのポプラの木、いつ、だれが植えたのか、わからないんです。私たちはこの木を「ポップ・ラくん」と名づけて、この木の情報を集めて履歴書をつくろうと今度は「POP’Laプロジェクト」を始めました。今、一番古い記録は1972(昭和47)年に写された写真だけ。これ以前の情報をお持ちの方、ぜひご連絡ください。

「基町POP’La通り」でピクニック

「基町POP’La通り」が一望できる対岸のビルに事務所がありますね。ここも「ポップ・ラくん」が取り持つ縁だとか…

▲太田川流域の間伐材でつくった「8月6日通り」の命名柱
そうなんですよ。通りの命名の話を新聞にとりあげていただいたんですが、そこに毎日仕事をしながら「ポップ・ラくん」と対話しているという三原進さんの話が載っていたんです。すぐ連絡を取って…、もちろん、会ったとたんに意気投合しました。「僕だけが独り占めしてるのはもったいない」というわけで、隣のスペースを間借りすることになっちゃいました。
 今では緑地帯のごみ拾いをしたり、ピクニックをしたり、ポップ・ラくんの身長測定をしたり、いろいろな活動を一緒に楽しむ仲間です。
「雁木タクシー」とも協力し合うお仲間と聞いています。
 ボートで川から広島の風景を楽しんでいただこうと始めた「雁木タクシー」の船長、大西明さんも私たちと同じ思いなんです。まだ知られていなくて、利用が少ないので、私たちも応援しています。昨年、一組あったんですが、新郎新婦がちっちゃなボートでやってきて、当時設置してあったステージや中国庭園を使って、結婚式を挙げました。今度は雁木タクシーに乗ってもらって、待ち受る人々とホップ・ラくんの下で愛を誓う、そんな喜びのシーンにも使ってもらえたらいいな。それより前に、雁木タクシーでデート、水の上で風を感じながら、愛を語る。川と街と緑と、そして二人…愛が深まること、うけあいよっ。川と陸をつなぐ水辺の雁木から乗り降りできる「雁木タクシー」、いかがですか。
▲「8月6日通り」の元安橋たもとから乗った「雁木タクシー」はポツプ・ラくんのそばに到着
「8月6日通り」というネーミング、ユニークですね。
 パリには「1945年5月8日」という地下鉄の駅があるんですよ。ナチスとの戦いに勝ち、平和がもどった記念日を駅名にするなんて、いきな計らいっていう感じですよね。広島もただきれいな名前というだけでなく、世界の人にアピールでき、少しでも平和や命のことを考えてもらえればという思いから、「8月6日通り」と命名されました。最近13カ国語の表示をつけたんですよ。もっとたくさん翻訳を集めて、世界中の言葉で「8月6日通り」を表示したいですね。

市民活動に市民だけでなく、企業や行政、専門家までが協力を惜しまなかったというのは、このプロジェクトがいかに魅力的だったかということでしょう。まちづくりのすばらしいモデルになりましたね。

 お金がなくては何もできないって、よく言いますが、心に響くメッセージと楽しさがあれば、人は集まってきますし、自ら動いてもくれます。
戦争を伝えることだって、いきなり悲惨な話をするより、ポップ・ラくんの木陰でピクニックしたり、「8月6日通り」でお茶したりしながら平和を実感することから始めるほうが、心に届きます。できることからぼちぼちと、楽しくやっていくことって、大切ですね。特に、まちづくりは…。広島に帰ってまだ2年ちょっとなのに、友達が一気に増えました。無理やり巻き込んだとも言えますが・・・。ご縁をいただいた皆さまに感謝して仕事だけではない人生の豊かさを実感しています。本当に・・・。


CAQ「街と人をつなぐ」ひろしま川通り活用委員会のメンバー、左から、三原さん、雁木タクシー船長の大西さん、隆杉さん、前田さん  

 

【問い合わせ】

●CAQ「街と人をつなぐ」ひろしま川通り活用委員会
(CAQ セアック) 事務所
広島市中区寺町5-15新光広ビル921
070-5021-4355
E-mail:tropcher@mx.usen.ne.jp
http://www012.upp.so-net.ne.jp/meimei/

【雁木タクシー】

雁木タクシー
<時間制の場合>4名まで、10分1,000円
<距離制の場合>4名まで乗船でき、基本料金は2kmまで900円、
追加1kmごとに400円
082-223-3767




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