信仰―法話コーナー

法話

人生、百点満点【2015年3月の法話】

身内の話で恐縮ですが、七年前に亡くなった祖父の話です。祖父は定年退職後、釣りに盆栽、メジロの飼育など、多くの趣味を存分に楽しんだ人です。我が儘なところもある人でしたが、娘である母のことも思いやってくれ、勿論、孫である私たちのこともかわいがってくれました。正月に親戚が集まると、笑顔の祖父を中心に食卓を囲む、それがいつもの風景でした。

その祖父が病気になった時、高齢のため手術もできないと診断されました。医師から余命を宣告され、家族で話し合い、本人にも残された時間を告げました。梅雨に入る頃でした。「わしは正月を迎えられんのんか」と祖父はこぼしたそうです。祖父が亡くなった後、祖父が使っていた手帳には病名が大きく記されたページがありました。後から思えば、医師の宣告を受け止めながらも、どこか信じられず動揺していたのでしょうか。

夏になると急に祖父の体は衰えました。医師の診断を受ける少し前まで、病気を抱えているとは思えない元気に笑う姿を見ていただけに、急に弱った祖父の姿を見たときは何も言えませんでした。自宅で生活できる間は自宅で過ごしましたが、細い体の祖母には看病も大変で、いよいよ入院することになりました。家族みんながもうすぐ迎えるであろう別れの時まで、なるべく祖父のそばにいるようにしました。当時学生だった私も、授業が休みで帰省できる時には病院へ見舞いに行くようにしました。そして、二カ月余りの入院生活の後、秋の気配を感じ始めた頃、祖父は静かに逝きました。

その入院生活の間、病院の先生も看護士の方も、皆さん優しく接してくださいました。ある日、回診にきた先生が祖父に尋ねました。「いつも皆さんが一緒で良いですね。あなたの人生は何点ですか?」祖父が何と答えるだろう、家族みんなの注目を集めるなか、祖父の答え。「百二十点!!」。その瞬間、家族みんなが涙をこらえつつ笑いました。「おじいちゃんは幸せじゃね」と。

人は生まれてきたからには、遅かれ早かれ必ず死を迎えます。あまりに早すぎる死、不意に訪れた突然の別れは本当に悲しく、やり場のない思いもあります。定年退職後、趣味を楽しみ、やりたいことをやりたいだけ生きた祖父のような人生、そしてその最期の迎え方は特異なものかもしれません。しかし、そのような祖父の生き方から学びたい大切なことは、自分の行き方に悔いの残らないような行き方をすること。人を大切に、そして人との出会いを大切にすること。そして、一日一日を大切に生きること。

その時をいつ迎えるかなどということには考えも及びませんが、私も自分の人生百二十点だと笑っていえるよう、日々を大切にしていきたいものです。

合掌

(日高 誠道)

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