信仰―法話コーナー

法話

一刀三礼【2013年6月の法話】

私が高野山におりましたころ、時間をみつけては写経をしておりました。お大師様のお膝下で書写する写経は格別なものであり、なぜだか心が穏やかになりましたし心の整理もできました。今思いますと、大変贅沢な時間をお与えいただいたなあと感謝しております。

「一刀三礼」という言葉がありますが、これは仏像を刻むときにひと彫りごとに三度礼拝するという意味です。一刀する度に三礼し仏像を刻みあげるには、膨大な時間を要したことでありましょう。またそこに込められた思いに、ただ感服するばかりです。

私も一度だけ一刀三礼ではありませんが、般若心経の文字を書く度に般若心経一巻をお唱えし書写したことがあります。大変時間がかかりましたので、数日に分けて書写いたしましたが、今まで何かにつけて自分を見失い急いで生きてきた自分にとって、自分自身とゆっくり向き合えたこの時間は、今でも私の宝物のひとつであります。

現在はスピードの時代となっています。速やかに、大量の物と情報、サービスが供給されなければ、多くの人々は心が満たされないと錯覚しておるように思えるのは私だけでしょうか?

桃栗三年柿八年というように、桃でも実がなるまでに三年の月日がかかります。一つのいのちが成長して熟成していくには、多くの縁と時間を要するのです。だからこそスピードではなく、ひとつひとつ丁寧に積み上げていくことが大切なのです。人生をどういうふうに積み重ねていくかは自分自身です。まずは自分を知る事が最低限大切で、気付きがなければ同じ過ちを繰り返ししてしまいます。自分を知るとは、現実と向き合って生きてゆくことであります。

作者はわかりませんが、次のような言葉があります。

「火の車 作る大工はおられねども 己がつくりて 己が乗り込む」

私もこの車にはたびたびお世話になっておりますが、やはり輝かしい未来のために、日々懺悔と感謝と敬意の心をもって、精進しようと心に誓いたいとおもいます。

あなたは、いつはじめますか?

合掌

(酒井太観)

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