信仰―法話コーナー


法話

智 恵【2004年10月の法話】

  平成十六年九月七日、すさまじい強風を伴った台風十八号が西日本に大きな被害をもたらしました。当山の弥山三鬼堂・本坊を含め、宮島全体でも大きな被害を受けました。当日は台風対策の為に本坊で待機しておりました所、昼一時頃から風が強まり、みるみるうちに物が飛び始めました。二時頃になると外に出られない程の風が吹き、どこからか倒木が飛んできたのを片付けに行きかけた時に、弥山山頂がうなりを上げました。津波のような風雨が駆け下り、危ないと思った時には、尻もちをついており、色々なものが飛ばされました。後は台風のなすがままで、風がおさまった五時頃に被害を見廻り唖然となるだけでした。翌日の朝六時に鐘を突いた時いつもより鐘の音が寂しく弥山に響いてるように感じられました。私も含めて、自然の恐ろしさを感じられた方も多いと思います。本当にあの台風の強風は忘れられない経験になりました。でもよく考えると、台風も自然現象ですし、身近では、私達が花の種を植えると、芽や葉が栄えてやがて花が咲きます。視野を広げると、太陽が東から西へ日の出と日の入りを正確に行っています。人間で言うと子供から大人へとなります。これも自然の中の一つではないでしょうか。お大師様は性霊集の中で大自然の中で生きる楽しさを話されております。「山中は都会の喧騒とちがい、静かで落ち着いて生命のふるさとに帰ったような安堵があります。朝は清らかに谷川の水を飲んで生命を支えて、夕には山にかかった美しい霧を大きく吸い込んで気力を養い、つたかずらを綴って衣にすれば体を覆ってくれ杉の皮を敷いて寝床にし、雨を司る竜神は情を示して雨を降らしてくれます。」山に魅せられたお大師様の言葉はふと目を閉じると光景が浮かんで来るようです。今、私達は文明社会に生きていますが、お大師様が生きておられた千二百年前とちがい衣食住全てにおいて好みの物が手に入ります。そこにはこの大自然から智恵を授かり、生きていく為の智恵を考え出していけたからです。今回の台風で風にあらためて恐ろしいという智恵を授けてもらい、その風から命や文明社会を守る事ができるのが私達です。そして大自然の中で一緒にいる動物や虫・木・花と共存し、相互供養し合い、大自然の偉大な力を忘れず間違いのない智恵を授かり、人間の智恵を正しい働きにして、大自然の懐に抱かれて私達は生かされていることを心から大自然に感謝したいものです。
南無大師遍照金剛

(小野湛海)


閉じる 

NMJNet Market Japan Corp.